パラレルSS 【裏社会アベミハ7】




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「それで?落ち込ませてどうしようもなくなったからって、家に来た訳?」


茶菓子も持たず、突然やってきた阿部に溜息交じりに告げたのは栄口。
切り分けたケーキと入れたての紅茶をテーブルに置きながら、うちは駆け込み寺じゃないんだけど、と阿部を睨む。

図星の阿部としてはその言葉に多少バツが悪そうに顔を歪めはしたものの。



「あんなケーキ用意してたんだ。どうせ後で家に来るつもりだったんだろ?手間省けて良かっただろうが。」


やがて開き直ると尊大な態度で、フンと鼻を鳴らして出された紅茶を一気に呷った。



「全く、この言い草だよ…人のクライアントを断っておいてさ。その件で来たのかと思ったら一言も無いし。」
「あれは、契約条件を無視した向こうが悪いんだろ。それに、俺は一度忠告したからな。」
「まぁ、三橋をそう言う対照にしたってのは、俺としても許しがたいけどね。」

カップを置き、2杯目を貰いながら話を続けると栄口は詳細を既に知っていたのか阿部に同意をしてくれた。
だからか、依頼を反故にした事についてはどうやらお咎めは無いらしい。
寧ろ、あの男の事を考えているのか、薄く黒い笑いを浮かべているのが阿部としては恐ろしい。
この栄口に目を付けられたら、それこそ銃で脅すぐらいじゃ済まされないのだ。
まぁ、それでも先程の所業を思えばその男に同情は沸かないが。

どうしてやろうかと酷く楽しげな様子に、阿部は一言。



「あいつに知れないようにやれよ。」


とだけ言った。
あいつ、とは勿論少し離れたテラスで、作成者である人物と笑いながらケーキを食べている子供の事だ。






「でも、今回のはイレギュラーみたいなもんだろ?店番くらいさせてやればいいじゃん。」


そうして暫く何やらブツブツと呟いていた栄口だったが、ややもすると元に戻り阿部にそんな事を言ってくる。
しかし、阿部としては「店番くらい」ではない。
何しろ、今回のような事はイレギュラーではない。
過去何度も、既にあった事なのだ。

三橋は何なのかそう言う輩を引き付け易いらしく、店でも出先でもそこらの道を歩いていても声をかけられる。
三橋の方が少しは警戒してくれればいいものを、飴玉一つで懐くほどの単純具合なので、阿部としては気が気ではないのだ。
今回は三橋がどうしてもと言うのでやらせてみたが、案の定だ。
やっぱり落ち込まれようが店番はさせられないと阿部は思う。

それを聞くと栄口はへぇ、と目を見張り、しかしその後納得したように深く頷く。いた


「阿部が手を掛けて育てたからなあ…」


すっかり毛艶もよくなり、彼らが引き付けられるのも分かる気がする、と栄口は言う。

確かにボロボロで見るも無残だった三橋を拾ってこれまで育ててきたのは阿部だけれど。
こんな余計な虫をひきつけるようになってしまったのは大変不本意な事である。



「まさか、阿部が子育て出来るとは思っても見なかったけどねー」


栄口がカラカラと笑うのが何となく腹立たしくて。
眉を顰めたままもう一口紅茶を呷れば、冷め始めたそれは何だか1杯目より渋みが増した気がする。

気持ちも口も苦々しいと、阿部は眉間の皺を一層こくした。





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