アベミハSS (盲目恋日記)

☆20日☆

●日記にアベミハSS。
●オフラインにスパーク新刊情報。



ちょっと目処がついたので久々にSS~。



いよいよイベントまで3日!!

緊張です…
でも楽しみです!!




















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【盲目恋日記】










愛されてると言う実感を得たいと思うのは、果たして我侭な事なのだろうかと阿部隆也は考える。
何かをしてくれと強請られる、とか。
皆が同じ時に一人だけ違う扱いをされる、とか。
自分より仲がいい人がいると拗ねる、とか。
特別とか、独占欲とか、嫉妬とか。
所謂そう言うものを阿部は三橋から殆ど感じた事がない。

ぶっちゃけ阿部は、三橋が誰より特別だし別格扱いは当たり前だ。
他の奴となんか同じに出来る訳も無く。
出来れば部活以外はずっと二人きりならいいのに、と半ば本気で思ったりする。
自分より三橋と仲が良い奴は当然ながら気に食わない。
田島とか1組に飛ばされればいいのにと願ったことも数知れない。
飛ばされた所であの二人のツーカー振りと仲の良さは変わらないと思うよ、と同じ数だけ栄口に突っ込まれたりもしたのだが。
閑話休題。

ともあれ、阿部の三橋への思いと言うのはそのように非常にわかりやすくあからさまであるのに対し、三橋からはそう言ったものが全く感じられないのは寂しいところだ。
何をするにも、阿部と二人きりより皆一緒の方が何だか嬉しそうだし。
そう言う時の阿部への態度も、チームメイト達に対するものと何ら変わりないものだ。
阿部が花井や水谷と話していても、楽しそうだね、で終わりだし。
有りえない事だがもし阿部が、三橋以外の誰かを三橋より優先させたとしてもきっと三橋は受け入れるのではないか。
そう思ってしまうほど、三橋の態度は恋人とは思えない、普通のものなのであった。
唯一、投球に関することは反応するのだが、それは恋人としてのものとは違うだろう。
お前、俺が捕手だから告白オッケーしたのか!?
いや、それどころか、もしかして捕手止めてほしくないからオッケーしたんじゃねぇよな!?
そんな風に阿部が勘繰るのも自然の流れ。
自分と同じほどに、とまでは言わないが、ほんの少しぐらいは返してほしい。
恋人としての実感がほしい。
阿部は常々そう思っていた。





思っていた阿部は、ある日どうしても我慢が出来なくなり、少しだけ三橋を試してみることを思いついた。
方法は至って単純。
女子に気の有る素振りを見せるのだ。
気の有る素振り――と言うと語弊があるかも知れない。
正確には、偶々、偶然、タイミングよく告白してきた女子がいたので、その返答を先送りにしたと言うのが正しい。
普段なら即答でお断りする阿部だったが、これまた運よく相手が考えるだけでもいいなんて言うものだから。
少しだけ迷う振りをして時間を稼ぎ、返事を後日と言う形に持ち越させたのだ。
そして、更にそれを三橋の耳に入るよう仕向けた。
噂好きの水谷に事の真相を聞かれた時に、態と言葉を濁せばそれは至極簡単だ。
いつもはっきりと断る阿部が、曖昧な態度でいる。
それは何も知らない人が見れば、少しだがその女子に気があって迷っているように見えるものだった。

「うわーん!何でこんな冷血タレ目にー!!」

部で一番に彼女が出来るんだと泣きながら叫ぶ水谷を、煩いと蹴り飛ばしながら阿部が盗み見るのは三橋の態度だ。
部活終わり。
阿部が水谷と話している横で、やはり特に何の反応も無くマイペースに帰り支度をしていた三橋。
三橋はどう思うだろう。
驚くだろうか。
傷つくだろうか。
もし傷付けて泣かせちゃったりしたら。
もうそれは全力で謝って、事情を話して慰めるしかない。
そのシミュレートは一応頭の中では済んでいる。

しかし、もしこれで本当に何とも無い態度であったら…

(流石にへこむってレベルじゃすまねぇんだけど…)

そう思って三橋に視線を向けようとすると…

バキャッ、と。
何だか尋常ではない破壊音。
見ると今まで普通にカバンに荷物をしまっていた三橋の手元で、何故かシャープペンシルが1本真ん中から真っ二つに折られていた。
やったのは…当然三橋だろう。
部で一番細い三橋だが、やはり投手の手の力は侮れない。
…じゃなくて!

「バッ…!!おまっ、な、何やって…手!!大丈…」

ぶか?と聞こうとした阿部の言葉が途中で不自然に途切れる。
こちらを振り返った三橋が、えもいわれぬ迫力の笑顔をその顔に浮かべていたからだ。
阿部がいつも胸を高鳴らせる力の抜けたような笑顔ではない。
背後に暗雲が見えるような。
そんな見た事も無い笑顔であった。

「あ、べくん…彼女、つくる、の…?」

笑顔のまま、三橋が尋ねてくる。
視線は自分より下のはずなのに、何だか見下ろされてるような気がするのは何故なのか。

「いや、作るとかじゃなくて…単に…」
「何…?」

しどろもどろになる阿部に対しても、三橋の追求は止まない。
夫婦喧嘩は犬も食わないといつの間にか退散していた部員達のおかげで二人きりの部屋の中。
阿部は正座で全てを白状させられたのだった。










そうして帰り道。
お詫び代わりの肉まんを三橋に手渡し、嬉しそうに頬張る姿を見ながら阿部は再度先程の事を謝った。
何と言うか、予想外の方向だったが。
一応三橋がちゃんと嫉妬をしてくれたと言うか、自分を好きだと思ってくれている事は実感出来た。

おまけに。

「あ、阿部くん…信用 して、な、な かったん だ…俺、の気持ち…」

唇を尖らせて。
可愛く拗ねる態度まで見させられては、もう。
疑いようはないだろう。

「ほんっと…ゴメン!信用してないとかじゃねぇけど、何つーか…俺ばっか好きみてぇだったっつーか…」

いや、でも、本当に恋愛感情なのかと疑ったのは確かなのでやはり信用してなかったと言う事か。
とにかく悪かったと顔の正面で手を合わせて謝ると、三橋がこちらを向いて正面から阿部を呼ぶ。

「阿部、くん。」

それは、相変わらず吃っていたが、三橋とは思えないぐらい強かった。

「俺、ちゃ、ちゃんと、阿部くんの、こと…好き、だよ…」

そして、きっぱりと告げる。
阿部が何よりほしかった言葉。

「本当?」
「うん…」
「ちゃんと、恋愛感情としてだよな?」
「そう、だよ…」
「そっか…」

嬉しくて、力を入れていないとありがとなと返す言葉が揺れてしまいそうだった。



――が。



「ほん、と…殴り倒したいくら い、大好き、だ!」

暗雲再び。
まだ怒りが収まっていない三橋に、阿部は冷や汗をかきながら後ずさる。

そうして阿部はこの後暫く、三橋の機嫌を取るのに苦労をしたのだった。





そして。

「阿部ってバカだよなー。三橋の独占欲が強いのなんて、マウンド見てりゃすぐ分かんのによー。」
「んっとにな。一番近くで見て知ってるくせに、態とあんな態度とって怒らせるんだから。アホだな、アホ!」

事情と阿部の浅慮を直ぐに見抜いた一部の部員が、帰りすがらにそんな話をしていた事は、当の阿部は知る由も無いのだった。











END





選択課題・恋する台詞(リライト様)より
             「殴り倒したいぐらい好きですよ」





強気な三橋と尻に敷かれる阿部というのも結構好きです(笑)

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